【7月26日を忘れない】③「月」に描かれた『架空の』施設
2025年07月13日 08:24
津久井やまゆり園の事件をモデルにしたと言われる映画「月」(原作:辺見庸著小説「月」2017年、映画:石井裕也監督・脚本)
世間一般の人がよく知らないかもしれない、重度障害者施設の現実を知ってもらうことはとても大切なことだと思います。
だからこそ「フィクションの部分」が殊更強調されてしまうと、理解以上に誤解を生みかねないと危惧しています。
【誤解されかねない演出表現】
■日常的な虐待や「開かずの間」の存在
■心の荒(すさ)んだ施設職員
■さとくんが「異常な職場経験」から非人道的思想にはしる
事件後の各種メディアで共通して語られた(架空の)ストーリーがありました。
「障害者施設は劣悪な職場環境」「そこで働くうちに職員が精神的にダメージを受け…」
これは明らかに障害者や施設に対する偏見を持つ人の発想です。
実態を知る人・知識をもって経験した人にとっては「キツい・大変な職場」とは言っても、「ひどい・異常な職場」という捉え方にはなりません。
(それは「何故そうなるのか?」の理由を理解しているからです)
京アニ事件の犯人は被害企業の元社員でしたが、残忍な犯行の理由を「そこで働いていたせいで」などと結び付けた論調はありませんでした。あくまでも当事者の認知の問題です。
■さとくんが「異常な職場経験」から非人道的思想にはしる
確かに、予備知識のない人が初めて重度障害者施設に行くと衝撃を受けることは想像に難くありません。
多剤服薬の方のよだれは臭いますし、失禁や「便こね」などもあります。支援員の仕事の中でも清拭や掃除にとられる時間はかなり多いといえるでしょう。
とはいえ、まともな支援員はOJTや研修を通じて適切に状況を理解し業務をこなします。
凶悪な犯罪を実行する理由(原因)に「施設職員だった時期がある」ことを結びつけるのはあまりにも安易です。
事件直後、多くの支援員が自らも心身に傷を負いながら利用者さんの支援を継続していました。
何気ない日常であっても重度障害の方の生活支援はなかなか大変なものです。志があるから、利用者さんへの気持ちがあるからこそ頑張っている。
社会が・個人が“見て見ぬふり”をしてきたのは、実はその点なのではないでしょうか。
障害者施設で障害者が暮らすことを望んだのは、利用者さん自身でも・そこで働く支援員でもありません。
そのことを忘れずに、多くの人がこの映画を観てくださることを望みます。
(2025年①-③)
本厚木・海老名のカウンセリング
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